プロマネに資格は必要か?

 プロジェクトマネージャ(PM)に資格は必要でしょうか?もう少し丁寧に表現すると、PMの役割を担う人は世の中にあるPM関連の資格を持っている必要があるでしょうか?

 世の中にどの様なPM資格があるかというと、代表的なものは、国家試験である情報処理技術者試験の「プロジェクトマネージャ」、PMI認定のPMP(Project Management Professional)でしょうか。

 私も20年以上前に両方取得していますが、正直に云ってこれらの資格を取得するために勉強したことでPMのスキル・能力が上がったと思ったことはありませんでした。学んだことは教科書的にはそうなんだろうけど、実際のプロジェクトの現場で起きていることに適用できるような知見・知識までは得られなかったというのが実感です。

 ただし、日頃自分たちが当たり前のように行なっている業務を、体系的に再認識する機会とはなりました。さらに、プロジェクト管理で使用するいくつかの用語を新たに知ることはできました。

 例えば、通常は順を追って実行するアクティビティを並行して実行することを”ファスト・トラッキング”と云います。本来はやってはいけない設計完了前に製作を始めてしまうようなことは、プロジェクトの現場ではよく目にすることですが、これに名前がついていることを、私はPMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系、PMP取得時の教科書のようなものです)で初めて知りました!(とはいっても、私は現場で”ファスト・トラッキング”という言葉を一度たりとも使ったことはありませんが。)

 私の知っている技術者には、資格など持っていなくともPMとして数々のプロジェクトを成功に導く実績をあげている人が何人もいます。彼らはなぜ資格を持っていないのでしょうか?

 私の経験からは、2つの理由があると思います。

 1つめは、時間がないということです。PMとして活躍している人は、1つのプロジェクトが終われば次のプロジェクト、それが終わればまた次、というように一年中忙しくしていることが多く、資格の取得に費やす時間が確保できない、より正確には資格の取得に費やす時間の優先度が低い、という状況にあります。

 2つめは、”資格”自体に価値を認めていないことです。このタイプの人は、周りが認める優秀で活躍しているPMに多く、誰も資格の有無を問題にしないぐらいの実績を積み重ね、そのポジションを確立しています。1つめを理由とする人が、一応資格は取っておきたいと思っているがそのための時間の優先度が低いのに対し、2つめを理由とする人は、そもそも資格など取る必要がないと思っているのです。

 いずれの理由にしても、その背景にあるのは、資格を取ることによってプロジェクトを成功に導けるわけではないという、当たり前の認識です。

 では、PMになろうとしている人に、資格など取得する必要はないかというとそうではありません。ここまでは、あくまで資格など取ろうと思えばいつでも取れる、といった既に実力のある人の話です。

 まだ実力がそこまで至っておらず、PMのスキルを向上させる必要がある人の話ではありません。実務経験はまだ浅いが、将来PMとしてもっと活躍したいという方には、資格を取得すること、そのための勉強を重ねることはお勧めします。

 第三者から見てPMの資格を取得するメリットは、プロジェクト管理の基本は理解している人なんだなと思ってもらえることです。資格は運転免許証のようなものと思ってもらえばよいと思います。運転免許証を取得したからクルマを上手に運転できるという保証はありませんし、何年も前に取得したがずっとペーパードライバーという人もいるでしょう。それでも、いざという時にこの人に運転を(PMを)任せてみようかという条件の一つにはなりえます。素地は身につけたはずなのだから、少し試運転すればある程度は走れるだろうという期待値は得られます。

 前段ではプロジェクト管理のスキル・能力が高いレベルにある人の話、後段ではこれからプロジェクト管理のスキル・能力を磨いていくレベルにある人の話をしました。

 前述の通り資格を持っているからといってプロジェクトを成功に導ける保証はまったくありません。既にPMとして活躍している人の世界では、資格を持っているということは何の売りにもなりません。過去やってきた実績がPMとしてのスキル・能力を物語ります。

 一方、これから活躍していこうとする人にとっては、実績が少ない代わりに最低限資格ぐらい持っている、そのための勉強をしてきたというのがPMとしての条件になりかねません。つまり、豊富な実績のあるPMとそうでないPMとでは、資格の意味が異なってくるということです。

 さて、あなたはご自身にとっての資格の必要性をどう考えますか?そして、それは妥当な判断でしょうか?