No.41: 応援者の意識付けはできているか

 プロジェクトが混乱し工程が遅延しているので対策として人員を増やすというケースがありますが、深慮なく安易に人員を増やすと更なる工程遅延を招く、ということになりかねません。そうなる原因の一つは、追加人員に対する現状説明や教育で既存メンバの時間を割かざるを得ないことであり、もう一つは応援者の意識付けができていないということです。

 プロジェクトの工程が遅延しているから条件反射的に人員を増強するというのは、現場を知らない管理者が選択しがちな愚策の一つです。当然ながら、追加投入する人員にプロジェクトが目標としているものや現状を理解してもらうために、工程遅延を挽回しようと悪戦苦闘している既存メンバの手を煩わせることになるからです。従って、人員を追加投入しようとする場合は、それによって得られる便益と損失を予め評価し、十分な便益が得られることを確認したうえで実施しなければなりません。

 そして、この便益を期待通りのものにするためには、追加投入した人員、いわゆる応援者にその能力をフルに発揮してもらう必要があります。応援者にとって見れば、混乱プロジェクトに投入されるということは、自分に責任がないのに急に多忙な環境に放り込まれるということであり、当面残業が増える日々になるかも知れないということになります。その様な状況にネガティブな態度や姿勢でプロジェクトに参画されると、既存メンバとの軋轢が生まれるなどチームが協調しなければならない活動に障害を生じます。

 つまり、応援者に当事者意識を持ってもらうことが、まず重要だということです。プロジェクトマネージャ(PM)は応援者に対して、なぜプロジェクトに参画してもらうのか、何を期待しているのか、しっかり時間を取って納得してもらう必要があります。そして、応援者を受け入れる既存メンバに対しても、応援者に何を期待して投入することにしたのか明確に説明し、メンバ間の認識の齟齬を無くし、一丸となって混乱の収束に邁進する雰囲気を作り上げなければなりません。

 自分の経験をお話しすると、私は何度か混乱プロジェクトの収束のため応援に入ったことがありますが、それは外部から自分の責任のないプロジェクトに参画したというものではなく、自身が率いていた組織内のプロジェクトにおいてのものであったので、上位者としての責任がありますし初めから当事者意識のある状況でした。それでもプロジェクトの既存メンバにとってみれば、多忙な中でさらに応援者への対応により自分の時間を割かれることになってしまうことに変わりはありません。

 その様なときに私が気をつけていたことは、まずは誰の手も煩わせずに、いまある資料や情報を元にプロジェクトの現状をできるだけ理解するということです。既存メンバからすれば、既存の資料等を見ればわかることまで一つ一つ説明したくはないものです。一方で、混乱したプロジェクトというものは最新の状況が整理されていないことが多いので、既存の資料で理解できる範囲まで到達したら後は既存メンバにヒアリングすることになります。

 応援者に対しては、この様なアプローチから入ってもらう意識付けも必要だと考えます。さて、PMや管理者の皆さんは、応援者が必要になった場合の意識付けをどの様に行なっているでしょうか。あらためて考える機会にしていただければ幸いです。

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