No.47: プロジェクトの振り返り方|プロジェクトの成功率を高めていくための施策

 開発プロセスを随時または定期的に見直し、成長させていくためには、プロジェクトの振り返りが重要です。この重要性は何度強調しても強調しすぎることはありません。それは、プロジェクトで実際に起きたことは、あなたの企業における現実であり、そこから得られるフィードバックは間違いなくあなたの企業だけの強みとなるからです。

 ただし、それはプロジェクトの振り返り方に依存します。言われたからやっただけのお座なりの振り返りでは組織の血肉とはなりません。振り返りの仕方として、前回計画と実績の偏差の分析、分析に基づく開発プロセスへのフィードバック論点の抽出、そして現場のメンバからの率直な意見の吸い上げを挙げました。これらは、プロジェクトを成果と実績で評価する外側からの視点と、日々の現場で起きていたことを評価する内側からの視点に分かれています。

 プロジェクト内のメンバによる振り返りは、全員を集めて行うというのはプロジェクトの規模によっては現実的でないかも知れないので、プロジェクトマネージャ(PM)とサブリーダクラスのメンバだけでも良いかも知れません。あるいは個々のメンバからはアンケート形式で意見を収集しても良いでしょう。

 ここで大切なことは、個人攻撃はしない、意見は何がダメだったかという言い方よりもどうすれば良かったかという建設的な言い方を推奨し、個々の意見に対してはまずは受け止め反論しない、させないということです。その前提で、プロジェクトの進め方及び開発プロセスの改善した方が良いと思った点、自分自身の反省点、そしてプロジェクトから学べたこと(Lessons Learned)をフリーディスカッション形式で進めます。

 PMがやや強圧的だった場合、プロジェクトの進め方についてメンバから率直な意見は集まりづらいかも知れません。その様な時は私が仕組みづくりとして提唱している”プロジェクトメンター”の様な第三者が仕切る形が良いでしょう。PMには黙って聞いてもらうことにして参加させても良いと思います。ここで、メンバから出る意見を率直に受け止めるぐらいの器量を持っているPMでないと、引き続きこの先のプロジェクトを任せずらいという見方はあります。

 プロジェクトを成果と実績で評価する視点での振り返りは、上記のプロジェクトメンバ内の振り返り結果を踏まえてPM、その上司、関係部門(企業によって異なるでしょうが営業部門、調達部門、生産管理部門、品質管理部門等)が集まって行います。

 その準備として、PM自身またはPMOの役割を果たした生産管理の様な部門があればそこが、プロジェクトの計画と実績の偏差を品質、期間、コストの観点で整理しておいた上で、評価や考察を行っておく必要があります。実はこれらの実績偏差は、必要が生じてから整理するのではなく、プロジェクト進行の過程で自然に積み上がる仕組みができているのがあるべき姿です。

 そしてもう一つ大事なのが、計画と対比する実績は、”現実”を表しているものであるということです。これは、各メンバの日々の業務を計測する仕組みがあることが前提であるのに加え、当該プロジェクトの進め方によるものにとどまらず組織全体が隠し事や粉飾を排除して正しい情報の価値を尊重している必要があります。あるタスクの実績工数が計画より増加していたという結果の原因が、実は予定外の割り込み作業が発生していてそれが含まれていたというケース。別なあるタスクの実績工数は計画通りだったが、実は残業規制により残業時間を申告しなかったという様なケース。これらのケースが起こらないようにしないと、計画と実績の偏差を正しく把握することはできないのです。

 これらの過程を経て得られたデータは、開発プロセスへの反映、見積もりや計画の精度向上に確実に活かせるものとなるし、それを愚直に続けることによってあなたの企業の貴重な財産を積み上げていくことになるのです。

 プロジェクトの振り返り、できていますか?

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