No.60: プロジェクトメンターはPMOとは違うのか|プロジェクトマネージメントのあるべき姿

 私は、プロジェクトを成功させるために、さらには複数のプロジェクトの成功率を飛躍的に向上させるために、プロジェクトメンターという第三者俯瞰支援の仕組みづくりを提唱しています。ここで、プロジェクトメンターとはPMO(Project Management Office)とは違うのかという質問を何度かお受けしていますので、私の考えをお話ししたいと思います。

 自身が担当として、または組織を率いる立場でプロジェクトに関わっていた時、その企業にもPMOと呼ばれる組織はありました。しかしながら正直に言ってしまうと、プロジェクトの現場で日々奮闘していた私の立場からは有難迷惑な組織でした。

 それは、その組織がプロジェクトのお目付け役の様な役割を果たし、工程やコスト、課題の解決期限等に問題を見つけたらフォローし、場合によっては企業幹部に言いつけ(ではなかったエスカレーション)するという動きをするからです。

 この様なアクションを行う組織は、企業にとっては管理上必要なものであることに間違い無いのですが、プロジェクトを推進する現場にとっては、問題が発生した時にその問題に集中できず報告や説明のオーバーヘッドを要する点で余計な負担を生じさせるものであることも事実なのです。現場に任せているだけでは、問題がタイムリーに上がって来ず、上がってきた時には炎上していて消化するのが大変なので、まだ煙の段階で把握したいのだ、という企業経営層の考えも当然理解はできるのですが。

 ただし、PMOの役割は企業によって異なるものと思います。プロジェクトマネージャ(PM)の補佐に徹し、プロジェクトの進捗データを定量的に整理して提供するだけという役割をPMOに与えている企業も見ました。さらにPMに寄り添って、困っていることを一緒に解決するという役割を持たせている企業もあるでしょう。

 これは、PMOという組織にどの様な人材を割り当てるかということに掛かってきます。これによってその企業がPMOというものをどの様に考えているかわかる部分でもあります。プロジェクトの経験はないが企業内で管理業務を経験してきた人材、実際にプロジェクトの経験をしてきた人材、若手または中堅クラスの人材、定年を数年先に控えた世代の人材等。

 いずれにしても、PMをやらせたら成果を上げる人材にはプロジェクトを任せた方が良いと考えるのが普通と思いますので、リーダーシップやマネージメントに長けた人材よりは裏方として支援業務が得意な人材を割り当てる傾向があるのではないでしょうか。

 私が提唱するプロジェクトメンターはその様な人材ではなく、実際にはPMを張れる力量があるがベテランの域に入っており、豊富な経験を活かしてプロジェクトを客観的かつ俯瞰的に捉え、他のPMの相談に乗れる頼れる人物を想定しています。そして、PMOがどちらかといえば機構側に立ってPMに対座するものとすれば、プロジェクトメンターはPM側と同じ側に立つものです。

 もしあなたの組織におけるPMOにその様な人材を当てているなら、それはプロジェクトメンターと同じ働きをするものかも知れません。

 あなたの組織にPMOがあるならば、それはどの様な働きをしている仕組みでしょうか。PMにとって心から頼りになる存在となっているでしょうか。もしそうでなければ、プロジェクトメンターの導入を考えてみてください。

関連提言:No.2: プロジェクトメンターとは何か?