No.61: PMが作業者になっていないか|プロジェクトマネージメントのあるべき姿

プロジェクトマネージャ(PM)にはプロジェクトを成功させるというミッションが与えられています。そのミッションを達成するために、PMは自分の有する権限をフル活用することが求められています。権限には、人・物・金等のリソースに対するものが含まれますが、この権限の使い方にはPMの性格が表れるものです。
人については、プロジェクトの体制は計画段階において最初に明確にしなければならないものなので、プロジェクトがスタートした時点で必要十分な体制を構築できているべきですが、メンバに100%に近い稼働を求めたものとなっているのか、余力を多めに確保したものとなっているのかの違いが生じます。
物については、プロジェクトの生産性を上げるために機材やツールをどの程度揃えるかという判断に違いが生じます。
お金については、人・物の確保状況の結果に依存する部分が大きいですが、プロジェクト内で対応できない部分について外部のパートナー等に委託するという判断に違いが生じるでしょう。
いずれのリソースについても、どう判断し差配するかはすべてプロジェクトを成功させるという目的に沿ったものである必要があります。しかし、時にPMがその本来の目的を忘れてしまったかの様な振る舞いをしてしまう状況に遭遇します。
その一つは、誰に任せればよいかわからないタスクが生じた時に、それをPM自身が作業者として消化してしまおうとすることです。管理者として、またPMとして、誰もやりたがらない仕事、誰に任せればよいかわからない仕事は、すべて自分の仕事と思うべきという考えはあります。しかし、それはイコールすべて自分自身が作業者として消化しなければならないということではないのです。
メンバに負担を掛けたくないので、これくらいなら自分でやってしまおうと考えるのは決して悪いことではありませんが、その様なことが積み上がってPMがプロジェクト全体に目配りできない状況になってしまえば何が起こるでしょうか。人はどうしても自分に責任のある目の前の作業に心を奪われてしまいがちなので、それに集中しているあいだに大局を見失ってしまうのです。
つまり、PMが作業者になってしまうということは、プロジェクトにとってリスクを抱える状態であることを、明確に意識しなければなりません。PMによっては別な意味のPM(Playing Manager)としての働きをしている人もいるかも知れません。しかし、それはプロジェクトの規模が小さい場合に限られるでしょう。
PMにはあくまでプロジェクトを成功させることを最優先の目的として、それを念頭に置きながらタスクの割り当てを行なってほしいものです。それを徹底するためにプロジェクトメンターの様に、PMの他に第三者的にプロジェクトを俯瞰して支援する立場の存在が、想像以上に効果的です。
さて、初めに「PMは自分の有する権限をフル活用する」と言いました。この前提として、PMには責任に見合った適切な権限が付与されていなければならないのは当然です。PMに適切な権限が付与されていないと、タスクを任せられるメンバがいないときにPMが自ら作業者にならなければならない状況が生まれます。この場合は、PMを作業者にしてしまう組織の問題と言わざるを得ません。
あなたの目の前にあるプロジェクトにおいては、PMが作業者になってしまっていないでしょうか?組織がPMを作業者にしてしまっていないでしょうか?
関連提言:No.26: 手段が目的化していないか?