No.67: PMが倒れそうなとき|プロジェクトマネージメントのあるべき姿

 プロジェクトがうまくいかず、プロジェクトマネージャ(PM)が精神的に追い込まれ、倒れそうになっている。上長のあなたはどの様に対処するでしょうか。育成や経験を言い訳に放置してしまってはいないでしょうか。

 私にも、企業でPMとして担当したプロジェクトで、精神的に追い込まれた経験があります。数多くのプロジェクトを経験しましたが、振り返ってみると”追い込まれ度”というのは必ずしも問題の大きさ、混乱の大きさに比例するものではなかったということに思い至ります。

 問題や混乱の大きさ、重篤度よりも、各方面からの指摘とその結果生じる重圧を自分ひとりで受けるかどうかによるというのが実感です。

 プロジェクトに関わらず、組織で仕事をすれば、360度周囲に関係者がいます。上を見れば、上長やプロジェクトオーナー。下を見れば、自分が統括、管理しているプロジェクトメンバ。横を見れば、総務、経理、生産管理、品質管理等他部門の関係者、あるいは他のプロジェクトを担当しているPM。

 自分がこれら全訪問から切り離されている様に感じてしまう、というのが危ない状況です。上長からは、プロジェクトが遅れていることに対して叱責が飛んでくる。プロジェクトメンバは平気で工程を遅らせ挽回しようと真剣にやっている様に見えない。他部門からはプロジェクトの遅れ、コストオーバー、品質悪化の兆しに対し是正要求だけが機械的に舞い込んでくる…。

 人は、味方や一緒に悩んでくれる仲間がいると、なんとか乗り切れるものです。プロジェクトが思う様に進展しないとき、叱責するだけでなく現場に入って一緒に対策を考えてくる上長がいれば、とても心強いものです。また、上長や関連部門から指摘を浴びる一方の状況でも、プロジェクトメンバがPMを中心に、チームワークを発揮して問題を乗り切ろうという姿勢を見せてくれれば、決して追い込まれてしまうことにはならないでしょう。

 PMひとりが追い込まれてしまう様な状況に至ってしまうのは、そもそもプロジェクトの立ち上げ段階時点におけるステークホルダの巻き込み方、つまりプロジェクトの遂行を支援してもらう関係を作っておくことに問題があった可能性があります。それはPMの能力でもありますが、それが苦手のPMの場合は、上長や組織がカバーしてあげる必要があります。

 やはり、PMが倒れそうになるというのは、PM自身に原因を求めるものではなく、そのアサインメントをした上長、倒れそうになるまで、場合によっては倒れてしまうまで放置した上長とそれを含む組織の問題と言えます。

 PMを任命した上長には、任命責任があります。PMが追い込まれている状況に気づいていない、気づいていても何の手も打っていないのでは、上長としての責任を果たしていません。以前このコラムでも取り上げた、目の前にある危機に気がつかず事態をより悪化させてしまう典型的事例です。すなわち、横並び、事なかれ、放置、先送り、隠蔽、やってる感、言い訳のどれかに逃げ込んでしまう様では上長として失格です。

 よほど強靭な精神力とレジリエンスを持っている人物でない限り、PMが欲するときに実務的及び精神的に支援できる存在が必要です。そうです。こんなとき、プロジェクトメンターが効果的なのです。

 あなたの組織において、倒れそうなPMはいませんか。いや、いないかどうか現場を見ていますか。PMが倒れてしまう様なことが合ったら、それは任命者の責任であるという覚悟はあるでしょうか。

関連提言:No.32: 目の前にある危機に気がつくか