No.80: 休暇中のトラブルに対応できるか

長期休暇を前にしてあるいは長期休暇に入って、起きてほしくないトラブルが発生する。休暇中に予定を組んでいたのにどうすれば良いか…。プロジェクトに限らず定常的な業務においても、突発的なトラブルが最悪のタイミングで発生するということはあります。皆さんはどの様に対応しているでしょうか。
世の中が長期休暇モードに入り、帰省や出国ラッシュの報道を見るたびに、その一方でいまこの瞬間も仕事に没頭している方々のことに想いをめぐらさずにおれません。
私も何度か長期休暇をプロジェクトに献上せざるをえなかった経験があります。多くは1〜2ヶ月ぐらい前から、プロジェクトの状況を考えると今度の休暇は休めそうにないぞという空気が支配し、避けようのない覚悟が生まれます。
その様な状況はまだ良い方で、対処に困難が生じるのは、休暇直前もしくは休暇に入った直後に緊急対応しなければならないトラブルが発生した場合です。顧客の運用に深刻なダメージが発生しているならば、企業や組織を代表してトラブルに責任のある立場としては個人的な予定を犠牲にしてもできる限りの対応をしなければならないでしょう。
自分だけで解決できる問題であれば、腹を括って休暇を諦め、直ちに取り組むこともできます。しかし、悩ましいのは自分だけでは解決できない場合です。トラブルに対応できるメンバは休暇に入り、すでに機上の人になっているかもしれません。そうでなくとも、簡単に休暇を返上させることができない事情もあります。
私も一度その様な経験をしました。まさに明日から長期休暇に入るという夜に、顧客先でシステムの据付調整中のプロジェクトマネージャ(PM)から、システムが期待通りに動作しないという報告を受けたのです。そのシステムは、24時間365日稼働しなければならないものであり、世の中の長期休暇期間など関係なく翌日の運用開始を大勢が待っていたのでそのインパクトは多大なものでした。
早速顧客先の重役に謝罪に行くことにはしたものの、状況をヒアリングすると問題の発生箇所は外部の会社に委託して設定した機器にあったのです。当該外注先の責任者にどうにか連絡を取り、至急調査と対策を依頼しましたが、すでに長期休暇に入った状況では思うようにいかず、結局なんとか委託先と対応の打ち合わせができたのは長期休暇の最終日になってでした。
いまとなっては、そもそも連休直前にシステムを引き渡すなどという計画に問題があり、たとえ顧客からの要求があっても日程を変えてもらうなどの交渉をしなければなりませんでした。問題が発生した時のバックアップ手段、体制を周到に準備しなければならなかったという初歩的な誤りを犯してしまった事例です。
つまり、休暇中にトラブルが発生すると、自分だけが休暇返上するだけでは済まないということです。企業に在籍していた時は、長期休暇に入る前に社員全員の休暇中の連絡先を確認することになっていましたが、連絡は取れてもトラブルが発生した時に対応できるかどうかはまったく別の話です。
休暇中のトラブルに対する処方箋は、プロジェクトの計画段階から休暇期間を考慮したスケジュールを組むこと、長期休暇前後に消化するタスクのリスクを入念に評価して事前に何か起きた場合の準備を整えておくことです。これは、その後私自身も肝に銘じて行ったことでした。
さて、皆さんは、長期休暇中にトラブルが発生したときの備えができていますか。それは組織的に共有されていますか。

