No.16: その報告・データに嘘はありませんか?

 プロジェクトの計画が十分細かく策定され、かつレビューされ、然るべき承認の下スタートしたら、あとはプロジェクトが計画通りに進捗していくかをチェックしていくことになります。計画が妥当的かつ適切な粒度で策定されていて、それを実行する組織が信頼を置ける体制であれば、基本的にPM(プロジェクトマネージャ)や上位管理者が注意を払うべきは計画段階で抽出したリスクの顕在化です。

 しかし、実行する組織がPMにとって初めての体制であるか、あるいは必ずしも信頼を置ける体制と言い切れない場合、日々の進捗についての注意深いチェックが必要です。それは、現場の担当者には悪気がなくとも、その報告やデータに嘘、より正確に云えば根拠のない楽観的期待による粉飾が混じる可能性があるためです。

 私がまだPMとして経験不足だった頃に経験したケースは、進捗状況が90%とか99%で停滞し、いわゆる日々のイナズマ線があるところで重なり続けていくというものです。PMが個々のタスクの進捗状況をメンバの主観的報告だけに基づいて管理すると、この様なことが発生しえます。多くの担当者は、進捗に遅れが生じていても素直に報告しづらいものです。それは、当該タスクの期限までの間に根拠なく挽回できる期待を持っていたり、上司やPMから責められたくないという意識が働くためです。

 また、計画段階で個々のタスクの進捗状況を、何を持って判定するかを定めていないこともその背景にあります。進捗状況の判定基準を定めるには、タスクが定性的でなくできるだけ定量的に管理できる必要があります。トム・デマルコ氏やピータ・ドラッガー氏が云ったといわれる、いわゆる「測定できないものは管理できない」ということです。

 例えば設計文書の作成タスクであれば、あらかじめ1つのタスクで対象とする目次範囲またはページ数を適切な粒度に設定し、作成したところまでを定量的にカウントできる様に定義します。かつ、ここが重要なところですが、担当者が作成したというだけで100%と判定しないことです。どういうことかというと、担当者が作成完了したと申告した時点では当該タスクの進捗度を例えば80%とし、組織またはプロジェクトで定めた審査ルールに沿って担当者の成果物を上位者のチェックが完了した時点で進捗度を90%、上位者のチェックによる指摘事項の反映完了した(それを指摘者が確認した)時短で進捗度を100%とする、ということです。

 以上の様にタスクの進捗を管理していけば、少なくとも担当者の報告に進捗管理を依存し、プロジェクトの終盤に「実は・・・」というようなLast Minutes Surprise(土壇場になって驚かされること)を防ぐことができます。

 さて、このコラムをご覧の皆さんは、PMとして、組織の管理者として、メンバや部下の報告・データに嘘が含まれていないことを確認していますか?また、嘘が混じらない様に事前に計画し統制できていますか?