No.22: 役職はロールプレイング
前回は、部下から自然に尊敬を集める権威を身に纏った管理者と、その対局にある自分は部下に従わせる権力を持っている立場だと信じている管理者の違いに触れました。残念ながら前者の様なリーダは全体のごく一部で、その他の特に官僚的組織の中における管理者は後者が大半であるのが実態です。いずれにしても、組織特に官僚的組織の中における中間管理者等の役職は、結局のところロールプレイングに過ぎないということをここでは付け加えたいと思います。
多くの方と同様、私もRPG(ロールプレイングゲーム)に時間の経つのを忘れて没頭したことがあります。RPGでは、ゲーム開発者が設定したロール(役割)を与えられてプレイ(演じる)しますが、組織における役職も、与えられた役割を演じることに他なりません。
”演じる”という言葉に違和感を覚えるかも知れませんが、その立場にあることが生来の自分とは違った形、方向での振る舞いをさせるということは間違いなくあると思います。それは、その役職の責任を果たすということでもあります。管理職になる前までは組織のルール、方針に多少なりとも反発していたのに、役職が割り当てられた途端それを守る、守らせようとする様になった等、思い当たる例は事欠かないのではないでしょうか。
私も、企業の活動の中における他部門との折衝等で、キツいことを云ってくる人物や業務の障害となる人物との遭遇経験がありますが、たまたま仕事を離れたところで個人的に会話をすると、多くは好感を持てる方々であり、仕事上の立場がそういう言動を生んでいるのだと理解できました。さらに、海外のビジネスマンとの折衝も経験してきた私から見ると、日本国内は特に建前と本音の開きが大きいと感じます。
自然に成果を上げて尊敬を集め必然的にリーダとなっていくごく一部の優秀な人物を除くと、大半の管理者はたまたま役割を与えられたに過ぎません。そうは云っても職場の誰もが管理者となる素養を持っているわけではなく、管理者となりうる最低限の基準を満たした人たちの中での話です。それらの基準を満たした人たちからどの様に役割が与えられるかというと、それは人脈、役割を与える側から見た人の好き嫌いの要素が大きいのが現実です。
その代表的事例は政界に見て取れるのではないでしょうか。政党を見れば、選ばれた党首、代表が主に自分の派閥、仲間を中心にポストを割り当てますし、内閣を見れば選ばれた首相が専権事項として閣僚を指名します。そこには役割を与えられる側からすれば、運の要素が強いのが否めません。
つまり云いたいことは、組織の中ではほとんどのケースで役職、役割は決して必然的に与えられたものではなく、他に適任者がいたかも知れない中、決して自分がその立場、権力を持てる人物に相応しいと勘違いするのではなく、謙虚に役割を果たしていく姿勢が必要だということです。その様な姿勢で仕事に取り組み続ける限り、役割を与えられた当初はもしかしたら冷ややかに見ていた部下たちからも、徐々に尊敬を集められる存在になる得るでしょう。
私たちは、組織の中においては、役割はたまたま自分に割り当てられたものとして、それを果たすことに集中するという謙虚さを忘れない様にしたいものです。