No.44: プロセスが確立されているか

 システム、製品またはサービスを開発するプロジェクト。その開発プロセスは確立されているでしょうか。明文化されたプロセスが存在していなくとも、優秀なプロジェクトマネージャ(PM)が一人いれば、目の前のプロジェクトを成功させることは可能でしょう。しかし、企業または組織の中で複数のプロジェクトを消化しなければならない場合はどうすればよいでしょう。プロジェクトの数だけ優秀なPMを確保できればよいですが、なかなかそうはいきません。そこで、必ずしも優秀でないPMであってもプロジェクトを成功させられるように、開発プロセスの確立が必要になってくるのです。

 システム、製品またはサービスの開発を生業とする企業といっても、主に派遣及び準委任契約で顧客先に入り込み、個々の技術者の時間の切り売りに依存しているところもあると思います。そうした企業が、請負開発業務としてプロジェクト単位で仕事を受け、時間の対価ではなく成果の対価をいただく様になっていくには、個々の技術者に依存せず誰もが拠り所にできる開発プロセスが前提となります。

 では、その開発プロセスはどうやって確立していけばよいでしょうか。

 一つの方法は、社内の経験の集約です。例え派遣や準委任契約であっても、顧客先企業等における開発プロセスに沿った業務を行っているはずです。開発プロセスの全般を経験することはできなくとも、それぞれの技術者が一部でも経験したものを集約させて自社の開発プロセスを構築していくというものです。ただし、顧客先企業においてもパートナー企業の人間に公開する部分は限られますので、開発プロセスのすべてを経験することは難しいでしょう。

 もう一つの方法は、社外の支援を受けることです。開発プロセスがしっかり確立された大手企業等で仕事をしてきた人間を採用するか、期間限定でコンサルティングを受けるものです。

 ここでの注意点は、参考にするのであれば疑いようのない国内トップレベル相当の開発プロセスを取り入れることです。おそらくは重厚な、これ以上はない厳しい開発プロセスを一旦俎上に載せ、自社に最低限必要なレベルに絞り込むという手順を踏みます。なぜなら、それまで経験の少なかった組織がいきなり重厚な開発プロセスを取り込もうとしても、消化しきれないからです。

 そして付け加える注意点として、その開発プロセスに基づいて実際に数々のプロジェクトを経験してきた人間に頼むことです。ただ開発プロセスを知っているという立場にいた人間と、それを使ってプロジェクトの現場を回してきた人間では、開発プロセスを理解している深さがまったく異なります。それは、自動車教習所における教本の内容を理解しているという人と、運転免許証を取得して既に数年の運転経験がある人の違いを想像してもらえれば分かることです。

 ただし、その様に自社の開発プロセスを作り上げることにしたとしても、他社の参考になる開発プロセスを取り入れるというだけでは、いわゆる”仏作って魂入れず”の状態です。その開発プロセスの背景、目的、効果といったものを理解したうえで適用していかなければ、こんなはずじゃなかったと期待外れの結果になりかねません。

 皆さんの組織や企業では開発プロセスを確立できていますか?それは”魂”の入ったものになっていますか?

 最新の提言を、メールマガジン(無料)で配信しています。是非ご登録ください。