No.46: そのプロジェクトを振り返っているか|プロジェクトの成功率を高めていくための施策

 開発プロセスは随時または定期的に見直し、成長させていく必要があります。その必要性は多くの経営者が認識しているのではないかと思いますが、実際にそれが定着している企業、組織は少ないのではないでしょうか。あるいは、定着できているつもりで、”やってる感”に満足してしまっているのではないでしょうか。

 プロジェクトを成功させるために、目の前の課題やリスク管理に全精力を注ぎ込み、なんとか完了に漕ぎ着けた。苦労したプロジェクトほど、それを完結させた後のプロジェクトマネージャ(PM)の脱力感は想像に難くありません。一方、優秀なPMであれば、一つのプロジェクトが終わっても、直ちに次のプロジェクトの応援に参画するなど、息つく暇もないかもしれません。

 つまり、プロジェクトの完了後に、じっくりプロジェクトを振り返るなどということは現実的になかなかないし、できないのです。まさしく「喉元過ぎれば熱さを忘れる」状態でしょう。プロジェクトを担当したPM自身は、そのプロジェクト内で経験した失敗や反省がメモリに刻まれ、意識的にでも無意識にでも次のプロジェクトに活かしていきます。

 しかし、そのPMが経験して得られたものを、個人の中に止めてしまっては勿体ないのです。PMが獲得した無形のものこそ、企業や組織の中で共有する財産にしていかなければなりません。しかも「鉄は熱いうちに打て」です。

 経営者の皆さんは、プロジェクトが終結を迎えたら、できればその翌日にプロジェクトの振り返りを行なわせてください。決しておざなりや形式的なものではなく、”じっくり”と行うのです。プロジェクトで燃え尽きてしまったり、次の仕事が待っている場合は過ぎたことの振り返りに時間を掛けたくなく、なかなか身が入らないかも知れません。しかしながら、もう一踏ん張りさせてください。振り返りの時間を十分取るということを義務付け、定着させてください。私はこのプロジェクトの振り返りこそ、企業や組織が成長していくための最大の栄養素になると考えています。世の中の参考書や講座などより、あなたの組織の実態に即した学びが得られる貴重な経験を、将来に活かさない手はありません。

 さて、プロジェクトの振り返りはどの様に行えば良いでしょう。避けなければいけないのは、建前的な議論に終始してしまうことです。個人を責める場になってしまうことも避けなければなりません。振り返り方は企業や組織の独自性があって良いのですが、私が最低限やってほしいと思うのは、計画と実績の偏差の分析、分析に基づく開発プロセスへのフィードバック論点の抽出、そして現場のメンバからの率直な意見の吸い上げです。その観点から、PMを頭としてプロジェクトメンバだけが参加する場と、それを踏まえてPM、その上司、品質管理部門、生産管理部門等が一緒に振り返る場と、分けて実施するのが望ましいと言えます。

 いずれにしても、この振り返りの場を、ただ時間を消費するだけの場とするのではなく、将来N倍の効果をもたらす生産的な機会とするために、全員の意識付けと共に組織文化として定着させることを推奨します。

 あなたの組織では、”振り返り”をできていますか?そして、それをおざなりでなく生産的な場にできていますか?

 最新の提言を、メールマガジン(無料)で配信しています。是非ご登録ください。