No.48: その遅れはお客様が原因?|プロジェクトの成功率を高めていくための心構え

 お客様からの要求の提示が、約束した期限より遅れている。システムの仕様を確定させるための打ち合わせが、お客様の都合により延期になり、開発の着手に遅れが生じている。お客様が調達することになっていた設備の着荷が遅れ、実機を使用した総合試験が始められない・・・。

 お客様が原因でプロジェクトに遅延が発生することはあります。その様な時に、お客様のせいなのだから自分達としては待つしかない、プロジェクト全体が遅れることになっても受け入れてもらうしかない、という思考になってしまっていないでしょうか。

 お客様の原因により最終納期の遅延やコストオーバーが発生した場合の対処については、契約条項に定めておくことによって、自社の損失を最小限にする手は当然打ってあるべきです。しかし、だからと言ってお客様が原因で遅れた日数分納期が延びますとか、伸びた期間分の発生コストを追加請求させていただきますという様なことを安易に持ち出すべきではありません。それは、自社が最善を尽くしてカバーできなかった時の最後の手段と心得ましょう。

 プロジェクト計画時には、日程にある程度のバッファを確保し、お客様の都合で発生しうる問題もリスクとして抽出しておくべきです。お客様サイドが計画通りに対応してくれなかったとしても、よほどインパクトの大きい事象でない限り、対処し吸収していくのがプロジェクトマネージャ(PM)のあるべき姿です。

 納期の延期を認めてもらえたり、コストオーバー分を上乗せしてもらえたとしても、そのプロジェクトとしてはそれでOKかも知れませんが、組織としてはそうではありません。メンバの何名かは次のプロジェクトが控えているかも知れませんし、プロジェクト終盤における品質部門の日程調整が必要となる等、見えないロスコストが発生するものです。部分最適ではなく全体最適ということを考えれば、お客様の遅れの原因にこちらから介入し一緒に解決してプロジェクトの軌道を修正した方が良いのです。

 過去の提言で、赤字(コストオーバー)は一過性だが工程遅延はボディブローの様に効いて影響が長引くという話をさせていただきました。お客様に原因があったとしても、同じことです。インパクトの大きい問題についてはリソースを集中して最短で解決し、決して問題による遅れを受容してしまわない姿勢が必要です。

 お客様から要求が提示されるのが遅れていれば、できればそれを遅れる前に察知し、こちらから押しかけてでも要求の整理を支援するというアクションを考えましょう。遅れる前に察知するということは、お客様との事前のコミュニケーションの確立ができていなければならないということでもあります。

 システムの仕様を確定させるための打ち合わせが延期になる場合は、メール等で最低限の部分の合意を得る、またはタスクの着手順序を組み換えて影響のない部分を進めておく、というような臨機応変な対応を考えましょう。

 そうしてお客様サイドの問題をカバーして、プロジェクトを当初計画通りに終結させることができれば、お客様の信頼も増すことになります。むしろ、「災い転じて福となす」ではないでしょうか。

 皆さんは、お客様が原因で遅れが生じ始めた時、どの様な姿勢で臨みますか?

関連提言:No.17: 赤字と工程遅延

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