No.65: ノウハウを組織に蓄積できているか|プロジェクトマネージメントのあるべき姿

あなたの組織、企業において、プロジェクトマネージャー(PM)によってプロジェクトの成功率に有意に差が生じるということはないでしょうか。一部のPMがプロジェクトを安定して成功させることができるなら、常にそのPMにプロジェクトを任せれば良いのですが、常時複数のプロジェクトを持っている組織の場合そうはいきません。
経営者としては、PMの経験差、能力差は承知のうえで、それぞれプロジェクトを任せていかなければなりません。では、PMによるプロジェクトの成功度合いを受け入れてしまって良いかというと、その前にやることがあります。
組織を運営しているなら、プロジェクトの成否を個々のPMの能力に左右させてはいけないのです。どういうことか。組織内の一人が成功のために心掛けていること、いわゆるノウハウの様なものを持っているなら、それを組織内に横展開することによって複数の人間が活用できるノウハウとなります。そし、組織内の一人が失敗の経験を持っているなら、それを組織内に横展開することによって複数の人間が注意すべきノウハウとなるのです。
つまり、有効なノウハウを組織内で共有することによって全体のプロジェクト成功率が少しでも上がることになるし、失敗の教訓を組織内で共有することによって全体のプロジェクト失敗率が少しでも下がることになります。その様に考えると、たった一人が外部と何のノウハウ共有もせずに仕事をしていくのに比べ、組織として仕事をしていけば成功率が上がる方向に進むのは至極当然だと思いませんか。
さて、あなたの組織はそれを実感できているでしょうか。もし、実感できていないとしたら、組織運営が大きく間違っています。成功のノウハウが一部のPM内にとどまっている。失敗の教訓も一部のPM内にとどまって同じ失敗を他のPMが繰り返す。それは組織の体をなしていないからで、単に組織という名前の下で各自がバラバラに仕事をしている状態です。
あなたは組織内でノウハウを共有させているつもりかも知れません。ノウハウシートを作らせて発表させている、ノウハウ集を作成している、と言うかも知れません。
しかし、優秀なPMが暗黙知として持っているノウハウを、漏れなく形式知化できているでしょうか。これは単にそのPMに持っているノウハウを言語化して纏めるように指示してできるほど単純な話ではありません。
PM自身にとってそれは必ずしもメリットになることではないので、組織内に便益をもたらす活動にはそれ相応の評価と見返りがあった方が良いでしょう。それでもそういった活動はPMに負担を掛けるので、プロジェクトメンターの様な第三者が介在し、もしかしたらPM自身も気がついていない隠れた手法やテクニックを炙り出すのが効果的です。
そして、それらのノウハウが集まってきたとしても、実際に活かされていなければ意味がありません。プロジェクトの現場で日々奮闘している担当者に、ノウハウ集がどこにあるか聞いてみてください。その返答にがっかりするかも知れません。
どこにあったかな、と探し始めた時点で多分一度も真剣に目を通したことがないでしょう。まだ探し始めるのは良い方で、そんなものがあることを知りませんでした、と言う担当者がいるかも知れません。
経営者が期待するほど、組織内のノウハウが継続的に蓄積されないし、活用されないのです。逆に言えば、その様なノウハウが実効的に蓄積され活用され始めたら、組織力は格段に上がっていくことに間違いありません。
あなたの組織は、日々ノウハウが抽出され蓄積される組織になっていますか。そしてそれが活用される組織になっていますか。現場レベルで浸透しているか、是非一度点検してみてください。