計画を”設計”できていますか?

 立ち上がったプロジェクトでプロジェクトマネージャ(PM)が最初にやることは計画です。プロジェクトで実現しなければならない製品・サービスのスコープ(対象範囲)、品質、期限、コストを確認したうえで、それらをターゲットとした計画を作成します。

 作成というと単に作業と受け取られかねませんが、実際には計画は周到に”設計”されるべきものです。製品・サービスを設計するのと同様、プロジェクトも設計する対象なのです。PMにとってプロジェクト計画の設計は、成果物の品質を確保し、プロジェクトメンバのパフォーマンスを最大限に引き出し、プロジェクトの利益を最大化するために、全集中で臨まなければならない仕事です。計画が出来上がった時点では、PMはそのプロジェクトを最後まで見通せている、不確定要素についてはそれをクリアするためのアプローチを定め、あらゆるリスクを想定し対処の準備を整えている、という状態に到達していなければなりません。

 ところが、この計画の設計を疎かにし、プロジェクトを見通せない計画のまま走り出したり、取り敢えず進めながら考えようという甘い考えで計画フェーズを終わらせるPMを目にします。なぜ、この様なことが起きるのでしょうか。

 一つは、性格的によく考えてから動き出すのではなく、動きながら考える、まず動いてから考える、というタイプがあります。例えばプログラムを作るにしても、いきなりコーディングを始め、ある程度動くものができてから後付けで設計書を書くというタイプです。締め切りのある仕事に対して、まず早めに見通しをつけたいというのが背景にあります。

 自分一人だけで仕事をする場合はそれでも良いでしょうが、チームを動かすときに、簡単な工程表を作ってあとはお任せ、自分で考えて、という様な纏め方ではメンバが何をすれば良いのか路頭に迷います。

 もう一つは、計画の必要性はわかるが、不確定要素が多いプロジェクトでは、そもそも詳細まで検討して計画してもその通りには行かないので、それなら多くの時間を計画に費やすのは無駄と考えるケースです。

 アジャイル型の進め方をするプロジェクトでは、その様な考え方もあるでしょう。しかし、不確定要素によりプロジェクトの計画に変更が発生するとしても、スタート当初の計画をベースラインとして設計しておくは大事です。そうでなければ、プロジェクトが終了した時点で、計画に対する実績の偏差を評価することができません。十分な計画なしに実施したプロジェクトの実績は、ただ出来高が残るだけです。どこが、なぜ計画通りに行かなかったのかを評価できないと、そのプロジェクトをやった結果を次に活かせないのです。

 組織におけるプロジェクト毎の経験は、将来のプロジェクトにおいて計画の精度を高め、組織としてノウハウを蓄積していくための貴重な材料なのです。組織のリーダはもちろん、PM自身も目の前のプロジェクトだけでなく高い見地からプロジェクトを捉えてほしいと考えます。いまあなたの前にあるプロジェクトは、計画を”設計”しているでしょうか?