No.13: その仕事は”重要”ですか?

 仕事における”重要性”と”緊急性”の違いを意識しているでしょうか?人によって、これらの違いを的確に判断して物事の優先順位をつけることができる人と、ほとんどまたは全く意識せずに結果優先順位に関係のない進め方をしてしまう人がいます。

 もしかすると、緊急度が高いということは重要度が高いに決まっているじゃないか、などと思っているのかも知れません。しかし、もちろん重要度と緊急度には明確な違いがあります。

 図の様に重要度の高低を分ける直線と緊急度の高低を分ける直線を引くと、それぞれの高低の違いごとに4つのブロックができます。直線で高低を区別していますが、実際には重要度も緊急度も、それぞれデジタルに2段階に分割されるわけではなく、アナログな連続値になっていることでしょう。それをあえて高低に分けるとしたらこの辺りかなという位置にあると理解してください。つまり、重要度、緊急度ともそれぞれの真ん中にある必要はないということです。平均値=中央値ではないということを考えれば当然ですね。

 そのうえで第一象限を”A”、第二象限を”B”、第三象限を”C”、そして第四象限を”D”と記しました。Aは重要度も緊急度も高い領域です。企業内、そしてプロジェクトに関係する仕事ではどの様なものになるでしょうか?私がすぐイメージするのは顧客先での製品事故、障害発生です。顧客側としては一刻も早くなんとかしてくれ、という状態になっていますので、企業としては最善の体制を優先的に割り当てて対処する必要があります。

 Bは重要度は低いが緊急度の高い領域です。ここにはどの様なものが当てはまるでしょうか。あえて批判も覚悟で私が例としてあげたいのは上司からの割り込みです。担当者がアイデア出しや設計に没頭している時に、口頭、電話、メールで期限が曖昧な質問や指示が飛んできます。上司にとって見れば重要度が高いのかも知れませんが、企業の全体最適の観点からは、本当に重要なことは少ないのではないでしょうか。上司のまた上司から要求されている、という様な質問・指示においては、本人たちが気楽に要求しているスピードは、担当者にとって緊急事項、少なくとも元々やろうとしていた仕事を中断して片付けなければならない重荷になっているのです。

 Cは重要度が高いが緊急度は低い領域です。この領域こそが、企業内の全員がしっかり注力して取り組まなければならないと強調したいところです。プロジェクトにしても定常業務にしても、当初計画を立てた時点でいきなり緊急度の高いタスクに満ちているということないはずです。もしその様な計画があれば、それは最初から破綻するのが目に見えています。当初計画は、妥当的なリソース(要員、時間、コストとも)を確保したうえでタスクに分割し割り振っているはずです。それを計画通りに推進していくことを最優先とするべきです。ここで割り込みが入ったり、思うように勧められなかったりすると、緊急度が低かったタスクが緊急度の高い領域に移っていき、そこに心が奪われてしまう悪循環の始まりになります。

 最後のDは重要度も緊急度も低い領域です。私からすれば、ここは放置して良く他に何もすることがないのであれば消化しておくという領域ですが、気をつけなければならないのは、そのうちに緊急度が高くなって重要度の高い仕事の遂行の邪魔になってしまわないようにすることです。最善の対処は、そのタスクを”重要”と考えている人または組織に代わりにやってもらうということです。企業内に誰もその様な人、組織がいなければ、そもそもその様な無駄なタスクはやらないことにしてしまった方が良いでしょう。

 以上、重要度と緊急度の組み合わせで分類した仕事への取り組み方を述べてきましたが、最後にあるべき姿、ありたい姿を付け加えます。それは下図にある様に、仕事の大半が重要度が高く緊急度が低いものに占められている状態です。日々、期限やスケジュールに追われることが少なく、心に余裕を持って目の前のタスクに集中する。結果として業務品質が向上し、後から緊急度の高い仕事を生み出してしまう(上流設計で漏れがあって下流で事故・障害を発生してしまうようなケースです)ことを極力防止していけるのです。上司も含めた全員が、この様な形に持っていくことを理想として仕事を整理していくべきではないでしょうか。