No.37: 問題を先送りしてしまっていないか

茹でガエルの様に目の前にある危機に気が付かず、気がついたときには挽回に相当な労力を要する、または手遅れになってしまっているという事態は誰しも避けたいものです。その様な状況に陥ってしまう思考の一つに”問題を先送りしてしまう”というものがあります。
前回、”問題を放置してしまう”という話をしました。”放置”と”先送り”は似ていますが、”先送り”は一応期限に対する意識はあってそれを延ばしてしまうのに対し、”放置”はまだ期限に対する意識が薄い、または無いということで区別します。”先送り”を安易に繰り返すと結果的に”放置”することになってしまうとも云えますが、ここではそもそもその問題を期限を定めて解決しようとする意識の有無をその違いとします。そして私の中では”放置”よりも”先送り”の方が悪質と捉えていますが、それは放置している問題はおそらくすぐに対応しなくとも当面は影響がないと判断したであろうという前提によるものです。その問題が実は重要で放置したことによって大きなトラブルに発展してしまうようなものであったとすると、それは放置した判断が誤りだったということであり、ここで対象としている”危機に気が付かない思考”のスコープ外と扱います。
さて、なぜ”先送り”という思考に陥ってしまうのでしょう。”放置”と同様、怠惰僻があるかも知れません。ただし、先送りということは一旦いつまでやろうと決めたことを守れなかったということなので、放置以上に戒めなければなりません。目標期限を定めてスケジュール上に乗せたことを実行できなかったのは、単に予定のタスクの着手が遅れる、または進捗が芳しくなく期限までに終わらなかったということではなく、立てた計画の精度が甘かった、厳しい云い方をすれば杜撰ということになるので、プロジェクトや業務を進めるうえでは先が思いやられる兆候です。スケジュールしたタスクでなく、To Do Listに載せたアクションであったとしても同様です。そこでの期限は、根拠のない期待によるものかも知れなかったということになるのです。
いずれにしても、一度先送りしてしまうと、それ以降も先送りを続けてしまう可能性が上がります。期限を守って処理しようという意識が先送りを重ねるほど弱まり、ハードルが下がってしまうのです。そして先送りを繰り返しているうちに、気がついた時には緊急事態になっている、ということになりかねません。「その仕事は”重要”ですか?」というタイトルで提言させていただいた通り、重要だけど緊急ではない仕事を先送りしていると、徐々にその仕事は緊急の領域に移動していき、気がついたときには最優先事項となって他の仕事を止めてでも対処しなければならなくなるというわけです。あるいは、もしかしたら先送りを繰り返しているその仕事は、実はやらなくてよかったものかもということを再考する必要がありそうです。
ここまでは、スケジュール上のタスクやTo Do List上のアクションといった、プロジェクトや組織内の公式的な仕事をイメージした話ですが、そこまでの重みはなくとも私たちには私的なことも含め日々細々とした作業が生まれ、処理しているものです。ちょっとした頼まれごと、調べものといったものです。皆さんは、「今日できることは今日やってしまおう」と考えるタイプでしょうか。それとも「明日で良いことは明日にまわそう」と考えるタイプでしょうか。現実にはケース・バイ・ケースで判断することになるのでどちらかに固定されることはないでしょうが、人によってどちらかに寄った思考の癖を有していると思います。私は、「明日で良いことは明日にまわす」タイプです。それは、”間”を置くことで拙速になってしまうことを避けると共に、明日になったら状況が変わってしまっている、もしかしたらやらなくてよい、他に良いアイデアが生まれるかも、と思うからです。これについては、どちらが正解ということではありませんが、プロジェクトのメンバまたは組織内の要員がどちらの思考癖を有しているか把握すると、仕事の見通しを得やすくなると思います。ただ、「明日で良いことは明日にまわそう」と考えるタイプは、自分も含めて”先送り”しやすいかも知れませんので要注意です。皆さんは如何でしょうか。
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