No.38: そこに隠蔽はないか

茹でガエルの様に目の前にある危機に気が付かず、気がついたときには挽回に相当な労力を要する、または手遅れになってしまっているという事態は誰しも避けたいものです。
その様な状況に陥ってしまう思考の一つに”問題を隠蔽してしまう”というものがあります。
製品を使用している顧客から、製品が期待した通りに動作しないことがあったというクレームを受けたケースを例にします。
これまでお話しした”事なかれ”主義に陥っている場合、「しばらく様子を見てください」という様な返答をし、顧客の操作ミスだったかも知れないとか、製品に欠陥などあってほしくないという願望が先に立って思考を停止してしまいます。”問題を放置してしまう”という思考のもとでは、製品に何か欠陥があるかも知れないと疑念を持ち調査しようとは考えるのですが、その調査を放置してしまいます。そして前回お話しした”問題を先送りしてしまう”という思考のもとでは、調査しなければという意思はあるものの、それを先送りしてしまいます。
いずれの思考においても、個人的にこの様な状況に陥ってしまったら、管理者を含む他者が気付いて修正してあげる必要があります。ところが、そういった状況を”隠蔽”されてしまうと、周囲ではどうすることもできません。顧客からクレームを受けたこと自体を隠蔽してしまうケースに加え、クレームを受けたことは共有してもその内容を軽微なものである様に隠蔽してしまうケースもあります。
なぜ”隠蔽”しようとしてしまうのでしょうか。これは自分の責任が問われてしまう状況にあるときに起こりがちです。自分が過去にしたことに問題の原因があるという自覚があって、問題とともにそれも詳らかになってしまうのを避けたいという意識が働くのでしょう。問題の原因に対する自分の非を認めているので問題に対処しようとはしますが、その対処自体も隠れて終わらせてしまおうとします。
結果、問題を解決してからこの様なクレームに対処したという事後報告がなされることがありますが、これを結果オーライで承認してしまってはいけません。これを認めてしまうと、問題に対処した本人にとって、直ちに問題に対処し解決できさえすれば報告は事後でも構わないのだ、という誤ったやり方を正当化してしまうことになります。”悪い報告は何よりも優先させる”ということを組織的に浸透させていること、そして犯人探しや個人の責任追求より問題に対処するという文化を根付かせることが大切です。
たまたま問題を早いうちに解決できれば良いですが、もし解決に手間取っているうちに顧客側から別なルートでクレームの連絡を受ければ、情報が組織内で共有されていないことが二次的被害をもたらしかねません。特に日頃顧客の最前面に立っている営業担当が知らないまま顧客と接することになった場合は、顧客の心象を大きく損ない、信用を失う事態となりかねません。
顧客からのクレームほどの問題でないにせよ、プロジェクトの進捗においても問題の隠蔽は避けるべき課題です。担当者に”隠蔽”の自覚はなくとも、実際には軽微な問題が生じていて計画通りにタスクが完了しそうにないがほぼ”オンスケ(On Schedule)”で進んでいるという報告をしがちです。せめて”ほぼオンスケで進んでいるが、○○の問題が見つかっており○○ぐらい遅れる可能性がある”という報告をする様、プロジェクトメンバ全員に浸透させている必要があります。問題をオープンにすることによって、もしかしたら他のメンバが適切な解決策を示してくれる可能性があります。また、将来同様な問題が生じたときに役に立てることもできるのです。複数のメンバで実行するプロジェクトは決して一人では成し遂げられないので、All for One, One for Allの心構えを全員で共有しなければなりません。
そしてプロジェクトマネージャ(PM) は、担当者からの報告を鵜呑みにするのではなく、必ずエビデンス等の事実を確認しながら、隠蔽が入り込む余地のない仕組みを実現させる必要があります。
皆さんのプロジェクト、業務では、”隠蔽”を認めない文化は醸成されているでしょうか?”隠蔽”が入り込む余地のない仕組みが実現されているでしょうか?
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