No.79: プロジェクトを見通しているか

　プロジェクトが混乱する最大の要因は、私の経験上、要件定義の失敗ですが、要件定義が上手く進み、プロジェクトの目的が明確になったとしてもそれを実現できなければ意味がありません。しかも顧客が要求する期間とコスト内での実現が求められます。プロジェクトで要求される成果物を要求される期間とコスト内で実現するために、プロジェクトマネージャ(PM)はプロジェクトのゴールまでの道筋を描き切らなければなりません。

　どういうことか。それは、プロジェクトの最初の計画段階で、実現しなければならない要件と実現に際しての懸案事項やリスク、実現するためのリソース(メンバ、設備、ツール等)をすべてテーブルに広げ、それらを検討し組み合わせてゴールまでの一つ一つのステップを作り上げることです。

　こういった問題が発生したらこう対処しよう、この様な事態になったらこうして乗り切ろう、と様々な状況を想定し準備をしてプロジェクトに臨む。結果、ゴールまで辿り着く未来がイメージできていて欲しいところです。

　これは、PMだけに限った話ではありません。プロジェクトメンバの一人一人も自分の受け持つタスクを含めてプロジェクトのゴールまで見通せているのが望ましい姿です。

　自分の作業をゴールまで見通すためには、自分が担当するタスクに着手する前提条件は何か、それはクリアされているか、それがクリアされるためには何をしておかなければならないか。例えば自分のタスクBに着手できる前提が他者のタスクAが完了していること、であるならタスクAの進捗に留意し、それが遅れそうなら手伝うあるいは代わりに実施できる他のタスクがあればそちらを先行する等を考えます。できる限りの手を尽くしながら自分の責務を果たしゴールに到達するというイメージを持つのです。

　メンバの一人一人がこの様な見通しを持ちながらプロジェクトに関わることができたなら、プロジェクトはかなりの確率で成功するはずです。

　そして、当然PMにプロジェクトを任せた上司、経営層においても同じです。PMにプロジェクトを任せて後は期待と願望だけ持って待つということではなく、上司や経営層の視点から、大局的に組織に存在する複数のプロジェクトのそれぞれに対し見通しを持って欲しいものです。

　この立場の方々にとってみれば、プロジェクトが始まる前の段階が大事なところです。つまり、プロジェクトの性格に合わせて適切なPMとリソースを割り当てる。もし体制に不十分なところがあれば、必要なときに外部から支援できる体制を整える。短納期でスケジュールが厳しそうなので、状況によっては引き渡しを遅らせられるか顧客側幹部の感触を得ておく等。

　上司や経営層においても、そういった支援をすることでいけるという見通しを得ることができれば、PMもメンバも自信を持ってプロジェクトに臨むことができるでしょう。

　さて、あなたが経営層の方、PMの上司、PM、プロジェクトのメンバのいずれであるにしても、目の前のプロジェクトに対して最後まで見通せているでしょうか。もし、見通せないまま進めている、進めさせてしまっているなら、何が見通しを阻害しているのでしょうか。その阻害は解消できないでしょうか。是非考えてみてください。

関連提言：No.7: 計画を”設計”できていますか？