プロジェクトメンターとは何か?

 プロジェクトを進める組織はどの様な構造を持っているでしょうか?プロジェクトマネージャー(PM)を頭に、複数のメンバー、大きなプロジェクトの場合はチームがいくつか構成されそれぞれにチームリーダを置いて階層的にメンバーが配置されているでしょう。

 “PMを頭に”と書きましたが、PMはプロジェクトの全権限を持っているわけではありません。PMはプロジェクトを運営管理する役割を担いますが、成果物の品質、プロジェクトの予算及び工期の決定権限については、プロジェクトオーナーが持っていることが多いと思います。

 企業内のプロジェクトであれば通常プロジェクトオーナーはPMの上司や役員クラスとなり、企業横断型のプロジェクトであるにしてもプロジェクトオーナーはPMの任命権(及び解除権)を持つ立場となるので、ほとんどのケースでPMは上司やプロジェクトオーナーの高評価を得るため、状況をよく見せようとします。

 つまり、どういうことが起きるかというと、PMは上司に対してプロジェクト内で起きていることをすべてオープンにはしません。少しぐらいの進捗の遅れは、「ほぼオンスケ(計画通り)」と報告し、遅れが大きくなっても「挽回可能」と報告します。

 ほんとうに挽回できるのであれば良いのですが、場合によっては遅れが拡大する一方となり、PMの裁量の範囲ではどうしようもなくなってから問題報告し、上司を驚かせるということになります。

 こういったことを防ぐために、上司がこまめにプロジェクトを監視する方法もありますが、それではPMを任命した意味がなくなります。PMもやりづらくて仕方がないでしょう。

 そこで、プロジェクトメンターの登場です。上司がPMの真上に鎮座する存在なら、プロジェクトメンターは上下関係からは距離を置いた斜め上の存在と言えるでしょうか。役員-上司-PMというような指揮命令ラインから外れている立場なので、PMを直接査定するわけではありません。PMの相談役となって、企業内のプロジェクトが成功を続けていくことのみにフォーカスするのです。ただし、プロジェクトに対してはプロジェクトオーナーに次ぐ権限を有します。

 PMは孤独です。各方面から、プロジェクト成否のプレッシャーとストレスを一身に浴びます。プロジェクトメンターはPMに寄り添ってその心理的負担を軽減しながら、プロジェクトを成功に導く支援をするのです。メンターとは、上司とは別に、先輩の立場で助言・指導し、人材育成に貢献する人です。指示や命令に頼らず、対話による気づきと助言により、対象者と良い関係を結び自発的・自律的な発達を促します。なお、「PMメンター」と言わず「プロジェクトメンター」と言っているのは、必ずしもPMだけを相手にするのではなく、場合によってはプロジェクトのステークホルダすべてを相手にするためです。第三者の立場からプロジェクトを俯瞰し支援する存在となるのです。