No.36: 問題を放置してしまっていないか

茹でガエルの様に目の前にある危機に気が付かず、気がついたときには挽回に相当な労力を要する、または手遅れになってしまっているという事態は誰しも避けたいものです。
その様な状況に陥ってしまう思考の一つに”問題を放置してしまう”というものがあります。
製品を使用している顧客からクレームが入りました。前回お話しした”事なかれ”主義に陥っている場合、製品が期待した通りに動作しないことがあったという報告に対し、その不正動作が常時発生するわけではなく、ごく稀にしか発生しないということで、製品設計担当者は顧客に「しばらく様子を見てください」という様な返答をしてしまいます。そして、顧客の操作ミスだったかも知れないとか、製品に欠陥などあってほしくないという願望が先に立って思考を停止してしまうというものでした。一方今回お話しするケースは、製品に何か欠陥があるかも知れないと疑念を持ち調査しようとは考えるのですが、その調査を放置してしまうというものです。あるいは、顧客に「調査します」と返答したにもかかわらず、それを放置してしまうというものです。どちらが良い悪いとは言い切れませんが、後者は顧客との約束を反故にしてしまう怖れがあります。
なぜその様なことになってしまうのでしょう。一つは製品設計者個人の怠惰僻があるでしょう。やろうという意識は最初だけで、その後忘れてしまうというものです。二つめは、製品設計者個人のスケジュール管理が甘いということがあります。やろうという意識は持ち続けるものの、自分が有するタスクの優先度付けができていないということです。もちろん現実として、他に優先しなければならないタスクがあって手を付けられないという状況はあり得ます。それでも、調査”しなければならない”という意識を持っていれば、他の設計者に依頼する、他のタスクの期限を交渉する等、対応できる手段はあります。
いずれの場合も、顧客からのクレームへの対応を個人の行動に依存してしまってはいけないので組織として期限と進捗を管理できていなければならず、そのうえで放置してしまったとしたら組織が機能していないということになります。
顧客からのクレームほどは重要な問題でない場合、すなわち組織的にバックアップできず個人の管理に依存する様な問題の場合、放置してしまうということは、やはり忘れてしまうことやスケジュール管理の甘さで日常的に起こりがちです。過去に「その仕事は”重要”ですか?」というタイトルで提言させていただいた通り、私は個人個人が常に重要度と緊急度を念頭に置いて仕事への取り組み方を管理すれば、ほとんどの放置は防げるものと考えます。重要度と緊急度を評価した結果、その仕事は現時点では優先度が低いと判断されることも当然あります。さらにだいぶ時間が経った後でも、その仕事は優先度が低いままということもあるでしょう。きちんと優先度を勘案したうえで放置されているものならよいのです。
定期的に優先度を評価したうえでの放置であるなら、実はそれは本当の意味の放置ではないかも知れません。そうすると、私たちが戒めなければならないのは、怠惰に負けて面倒そうな仕事を放置してしまうこと、重要度と緊急度の評価を忘れ優先度を上げて実施しなければならない仕事を放置してしまうこと、になります。 皆さんは、意図的でなく問題を放置してしまっていることはありませんか?
最新の提言を、メールマガジン(無料)で配信しています。是非ご登録ください。