No.89: ファイナルを共有できているか

 プロジェクトの最終成果物、あるいは中間成果物についても、作成過程で何度か見直しが行われて完成度が高められ、最終版に至ります。この最終版は、そこまでの過程で作成された他の版よりも明確に識別され、確実に保存されなければならないものですが、そうなっているでしょうか。

 企業に在籍していた時、ある資料の最終版を要求すると、しばしば担当者が共有フォルダ内を時間を掛けて探索するシーンに遭遇しました。フォルダを覗くと、作成途中のファイルが乱雑に残っており、最も大切な最終版がその中に埋もれているのです。

 あるいは、顧客に提出する報告書を、添削を繰り返しながら作成し、最終版として営業担当経由で提出したところ、営業担当が発信者名に訂正を入れたという様なことがあったのに、その訂正版が社内で最終版として管理されないままとなっている。この様なことは現実に起こり得ます。

 成果物の最終版を確実に識別し、それをチーム内、プロジェクト内で共有できないことがあるとすれば、それは致命的問題を引き起こします。その理由はあえて付け加えるまでもないでしょう。

 これは、組織的にファイルの管理ルールを定めていることや、バージョン管理ツールを導入することによって完璧に防げるというものではありません。なぜなら、最終的には人間の手によってなされるものだからです。

 特に、期限や締め切り直前の土壇場になって修正が発生し、それを時間に追われてドタバタと反映すると、そのファイルの登録を後回しにしてしまうことが往々にして発生します。そして、無事期限に間に合ったことでホッとしてしまい、後片付けを忘れてしまうのです。

 完成させた直後は、作成した本人であれば当然どれが最終版なのか識別できます。しかし、本人であっても一週間空いてしまうと、どれが最終版だったのか自信を持って識別できないことがあります。ましてや他人からすると、どれが最終版なのか検討がつきません。

 私個人的には、最新版のファイルは常に特定のフォルダ下にただ1つだけ存在する状態とし、過去のすべてのファイルは”old”または”prev”というフォルダを作成してそこに置いておくということを徹底することにしています。

 規準やルールがあっても、それを実行するのは人であり、最終版として保存すべきところに保存してから提出する。そういった普段からの動作の徹底は、プロセスの問題ではなく教育の問題になります。

 残念ながら、規準やルールを作成したからその通り運営されているはず、と安易に捉えている管理者がいるのが実態です。規準やルールは実行されてこそ意味があるものであり、最後まで実行するのは実はとても難しいことなのです。

 あなたの組織では、その成果物の最終版は関係者の誰に聞いてもどれであるか識別できる様になっていますか。抜き打ちで確認してみると、実態に落胆してしまうかもしれません。

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