No.123: 衝突を恐れていないか

 プロジェクトに混乱が発生すると、疲弊したメンバー間でどうしても感情の対立が発生してしまうことがあります。そうした時に、プロジェクトマネージャー(PM)が対立や衝突を恐れてしまっていないでしょうか。

 私が若い頃にPMを担当したあるシステム開発プロジェクトで、翌週の顧客立会検査を控え、深夜までのテスト及びデバッグ作業を繰り返す毎日が続いたことがありました。短納期案件を受けざるを得ず、不本意ながらメンバに過負荷を与えてしまうプロジェクトでした。

 自社内で試験用のシステムを構築した現場において、メンバ全員が忙しくシステムのテストと、そのテストで発見された不具合の修正を行なっている最中、あるメンバから「やってられませんよ!」という大きな声が聞こえてきました。

 法規制が厳しくなった今では考えられない連日の超過労働に、休みもなく頑張っていたメンバが感情を露わにしたのです。そのメンバを配下に持つリーダは、「しかたないだろう!このままじゃ間に合わないんだから!」と、こちらも感情を表に出して反応しました。

 一瞬、現場の空気が変わり、二人に注目の視線が注がれました。私は、無理な作業を強いてしまっていることに申し訳ないと感じていました。このメンバだけでなく、声を発しないまでも同様な思いで作業を続けているメンバはたくさんいるはずなのです。リーダ自身も、責任感から役割を続けていますが、心の底では同様な思いだったかもしれません。

 ただ私は、この二人は普段から仲が良く、お互いに信頼している関係であることもわかっていました。なので、決定的な亀裂が入る状況ではないと思っていました。逆に、鬱積したものを溜め込んでおくのではなく、一旦吐き出してしまうのも大事だと判断したのです。

 少し落ち着いたところで、私はそのメンバのところに近づいて、大変だろうけど来週の立会検査まであと少し頑張ってほしいこと、そして早く終わらせてしまおうと、努めて冷静に話をしました。そのメンバも、自分たちの置かれた状況や、やらなければいけないことはわかっているので、冷静さを取り戻して作業に戻ってくれました。

 その時から、メンバ全員のギアが一段上がったことを感じました。多くが口に出せなかったことを一人が代表して表に出したことで、思っていることは一緒なんだと、感情を共有できたのではないかと思います。

 プロジェクトを進めているのが人間である限り、感情の対立は避けて通れないものです。しかし、その対立を避けようとしていると、水面下で不公平感や疑心暗鬼の塊がどんどん大きくなり、メンバのベクトルが合わないままプロジェクトが低速走行を続けるということが起こり得ます。

 感情の対立や衝突を避けようとしたり、見て見ぬ振りをするのは逆効果です。PMには、むしろメンバーの不満や不安を吐き出してもらい、それに対して真摯に向き合う姿勢が求められます。メンバも、感情を表に出した後には、プロジェクトの責任を負ったPMの大変さを理解してくれるでしょう。

 毎回その様なプロジェクトを経験したくはありませんが、こうした過程を経たプロジェクトはそれまで以上に結束力が高まるというのが私の実感です。

 あなたの組織、プロジェクトでは、感情的な対立や衝突を避けてしまっていないでしょうか。表立った衝突がない状況は、もしかしたら水面下でもやもやした状態が蓄積されており、プロジェクトの推進力を奪っているかもしれないことに思いが至っているでしょうか。

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