No.119: エスカレーション・ラダーは機能しているか?

 プロジェクトに限らず業務上で問題やトラブルが発生したとき、その深刻度や影響度により組織内の階層を辿ってエスカレーションしていくことになりますが、この仕組みが正常に機能しているでしょうか。

 エスカレーション・ラダー(Escalation Ladder)とは、元々は国と国のあいだの対立、紛争等の危機的状況が、徐々に激しくなっていく(エスカレート)していく過程を、はしご(ラダー)に見立てて表現したものです。

 ビジネスにおいては、組織内の階層を上る様に上位役職へ報告をあげていく仕組みということになるでしょうか。組織内の個々の”ラダー”において判断が高速かつ正しく行われるかどうかは、ビジネスのスピードと命運に直結する重要なポイントの一つです。

 私は、かつて企業内でラダー内の一階層を担っていたときに、問題がこのラダー上をすこぶる的確にスムーズに流れたことを経験したことがあります。

 それは、自分の担当していた製品に、今後の事業展開に致命的な影響を与えてしまうかもしれない問題が発覚したときのことです。私は、直ちに直属の上司を訪れ、口頭で問題を報告しました。その上司は瞬時に問題の重要度を認識し、その場で管掌役員に電話を入れ、2人で一緒に役員室に向かいました。役員室で管掌役員に相談すると、その管掌役員は私たちにいくつかの質問をすると状況を大まかに把握し、席を立って社長室に向かったのです。そして社長秘書に向かって「いま、社長空いてる?」と聞き、在室していることを確認すると、3名で社長室に飛び込み、直ちに問題の報告と対処方法を全員で議論し始めることになりました。

 私が直属の上司に報告してからおおよそ1時間もかからないあいだで起きたことです。普段はぎっしりスケジュールが詰まっている管掌役員と社長に、たまたま間隙の時間があったこと、当該製品が当時企業における重要な事業であったことなど、レアな条件が揃ったことがあるでしょう。しかし私はその時、深刻な問題に直面しているにも関わらず、その事態の流れ方には痛快な想いを持たずにはいられませんでした。ちなみに、この一連の報告と議論の中で、新たに作成した資料などはありません。目の前にあるだけの物を使って、口頭で補足して説明しました。

 さて、翻って同じ企業の中で、時を隔てて別な”ラダー”において仕事をしていたときのことです。問題の深刻度は異なっても、各ラダーを上がるごとに資料を作成しチェックを受けるということを繰り返すことがありました。前の事例との違いは、社長を初めとしてラダーを構成する人々が代わっていたことです。

 残念ながら、その時の各”ラダー”は問題の重要度に応じて自分に何ができるか、何を判断すべきか、ということよりも、自分の上司から怒られないこと、評価を下げられないことに重きを置いている様にしか見えませんでした。

 日本の組織階層においては、それぞれの責任と権限が明確に定められておらず、各役職にとっては自分の責任と権限を手探りしながら判断を求められる局面が多いと感じます。そこで、”ラダー”を構成する皆さんは、自分にパスされてきた問題に対し、的確な判断を下せているでしょうか。問題そのものへの対処より、他の何かを優先させてしまっていることはないでしょうか。

 そして、経営者のあなたは、あなたの率いる組織が、問題そのものへの対処よりもあなたの顔色を伺う状況を見過ごして、あるいは良しとしてしまっていないでしょうか。

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